生命に大きく関わる「動脈硬化」とは?

動脈硬化とは

「動脈硬化」という言葉は、いまではとても耳に馴れた、なじみ深い言葉の1つです。動脈という、心臓から全身に酸素を送る血管が硬くなったり、厚くなったりして血のめぐりが悪くなったり、血管が詰まった状態を総称して、「動脈硬化」といいます。

動脈硬化の代表的なものに、「アテローム性粥状動脈硬化」があります。これは血管の内側に、プラークと呼ばれるドロドロになった異常なコレステロール(体内脂質の1つ。本来は各種のホルモンや細胞膜、胆汁酸などの原料になるもの)の塊がたまって起こります。 その成り立ちは、次のとおりです。

  1. 血管の内皮細胞にLDLコレステロールが入り込む

    そこへ、マクロファージという免疫細胞(外敵などと戦う細胞)が現れて、この超悪玉コレステロール(酸化LDL)を食べ尽くし、血管を掃除しようとします。 ところが、超悪玉コレステロールが多すぎると、それを掃除しきれずに、マクロファージが途中で死んでしまいます。その死骸と酸化LDLコレステロールが血管の中にたまると、ブヨブヨしたプラークができます。このブヨブヨのプラークは、とてももろくて破れやすい状態です。これがたまると、血管の内膜がもろくなり、内腔の形もいびつになります。

  2. ブヨブヨしたプラークの一部が破れる

    これを塞ごうとして、そこに血小板などがくつつきます。このため、内腔が狭くなった血管は簡単に目詰まりを起こしてしまいます。これを「プラークの破綻」といいます。プラークの破綻はある日突然起こり、血管を詰まらせます。したがって心筋梗塞や脳梗塞も、ある日突然起こります。

動脈硬化は血管の修復作業

「人は血管とともに老いる」と言ったのは、カナダの医学者ウィリアム・オスラー博士です。長い年月血管を使用していると、血管はしだいに硬くなったり、詰まりやすくなあってきます。この、血管を硬くするいちばん大きな要因は血圧です。

血圧とは、血管にかかる庄のことで、心臓から出る血液量(心拍出量)と血管の硬さ(末梢血管抵抗)で決まります。心臓は収縮と拡張を繰り返しながら、血液を全身に送っています。

この、心臓が収縮したときに血管壁にかかる圧力が収縮期血圧(上の血圧)です。 この時血圧が最も高くなるので、「最大血圧」ともいいます。

一方、心臓が拡張したときに血管にかかる圧力が拡張期血圧(下の血圧)です。血管にかかる圧力は最も弱くなるので、「最小血圧」ともいいます。 血圧が高くなる理由は、1.心臓から送られてくる血液の量が多いとき2.血管が狭くなったために血液が流れる際に血管壁を内側から押す力が強くなつたとき、です。 当然、血圧が高いほど血管は傷みます。心臓は1日に約10万回拍動して、血液を送り出します。そのたびに血管の壁は強くたたかれます。

1日10万回もたたかれれば、血管の壁はいやでも硬くなってしまいますね。血管が硬くなれば、血液を先へ先へと送っていくのに必要な柔軟性が失われて、体のすみずみに血液がめぐりにくくなります。すると、すみずみの細胞が「もっと血液を送れ」「もっと栄養をよこせ」というサインを出します。 このサインを感じた脳は心臓や血管に、もっと圧力を上げて、もっとたくさんの血液を送るように命令を出します。すると、血圧が上がります。血圧が上がると何が起こるでしょうか。

血管のいろいろなところに無理がかかり、簡単に言うと、破れやすくなります。体はこの破れやすいというピンチを敏感に察して、血管を補強します。 すると血管は硬く、分厚く、補強されます。血管が補強されて強敵になることは、一見よさそうですが、皮肉なことに強敵になったことで血管は硬くなり、血液がめぐりにくくなって、

さらに高い圧力を必要とするようになります。 この堂々めぐりで、血管は歳を追うごとにますます硬くなります。つまり動脈硬化は、血管の填れそうなところを補強するために起こる、ある意味、自然の修復作業なのです。こんなことを言うと、必ずといっていいほど、「自然の修復作用なら問題ないのではないか」と言う人がいます。ところがこれが、問題大ありなのです。

なぜなら、血圧が低ければこの修復も少なくゆっくりですが、血圧が高くなればなるほど加速度的に修復が増えるからです。 そして、糖尿病、脂質異常症など、血管の環境を損なうものが多ければ多いほど、この修復の作業は大きく、多く、速くなっていきます。

つまり、それだけ動脈硬化が進むわけです。

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2008 年に日本に導入された特定健康診査。その診断基準を見てどのように感じたでしょうか?「厳しすぎる」と感じた人も多いはずです。医療関係者の間にも、当初そうした批判が少なからずありました。

特定健康診査は、いわゆる「健診」のことで、問診、身体測定、血圧測定、血液検査、尿検査などを行います。 メタボリックシンドロームや高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を早期発見し、早期対策に結びつけることが目的です。 特定健康診査は、高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、保険者が実施することになっています。

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しかし、特定健診の目的を考えれば、それは必ずしも厳しすぎることはありません。むしろ、それくらい厳しくしないと、この健診の目的は達せられません。

なぜなら、特定健診は病気を見つけるためのものではなく、「動脈硬化が速く進む集団を検出するための健診」だからです。特定健診の診断基準は、メタポリックシンドロームの診断基準をほぼ流用しています。

メタボリックシンドローム 診断基

腹囲男性 85 cm以上、女性 90 cm 以上に加えて以下のうち 2 項目以上

  1. 血圧(上の血圧 130 mmHG 以上、下の血圧 85 mmHG 以上のいずれかまたは両方、薬剤治療を受けている場合)
  2. 血中脂質(中性脂肪150 mg / dl 以上、HDLコレステロール 4 mg / dl 未満のいずれかまたは両方、または薬剤治療を受けている場合)
  3. 血糖値(空腹時110 mg / dl 以上、または薬剤治療を受けている場合)

メタボリックシンドローム の診断基準の必須項目である腹囲の測定は、本来なら CT で内臓脂肪を撮るべきなのですが、それを簡便化して、腹囲を計ります。内臓脂肪はおへそを中心としたお腹まわりに蓄積されます。

メタボリックシンドロームの腹囲の基準値は、腹部 CT 検査の内臓脂肪面積 102 cm に相当します。内臓脂肪面積が 100 平方センチ以上になると、それ以下より合併する疾患の数が5割アップすることがわかっています。

この腹囲の基準の妥当性についてはさまざま窒息見もあるようですが、ここではその議論はほかに譲ります。 血圧の数値は、高血圧症の診断基準の「正常高値」の値に準じています。

上の血圧(収縮期血圧)、下の血圧(拡張期血圧)とも、これより高い圧力が血管壁にかかると、動脈硬化が促進されるリスクが高くなります。 血中脂質の検査では、中性脂肪とHDL(善玉)コレステロールを調べます。

HDL コレステロールは余分な LDL (悪玉)コレステロールを掃除するコレステロール。中性脂肪が増えて HDL コレステロールが減ると、動脈硬化を促進させる LDL コレステロールが増えてしまいます。 LDL コレステロールは動脈硬化を促進させる直接的な因子なので、

この診断基準にはあえて入れていないようです。血糖値の基準値は、メタポリックシンドロームに比べて、特定健診ではさらに厳しい値(空腹時 100 mg / dl 以上)が設定されています。 また、特定健診は空腹時血糖に加えてヘモグロビンA1C(5.2% 以上)も基準項目に入っています。

基準値を見ればわかるとおり、メタボリックシンドロームあるいは特定健診に該当する人は、病気ではありません。仮にすべての項目に該当したとしても必ずしも病気とはいえないのです。

しかし放置すれば、近い将来、狭心症や心筋梗塞、脳卒中になる確率が格段に高くなります。そうならないために、いまから予防しましょうと注意喚起をしているのが、特定健診です。

ところが、最近恐ろしいことがわかってきました。糖尿病、高血圧症、脂質異常症(高脂血症)といった、病院での治療が必要な病気になる手前の段階でも、すでに動脈硬化が進んでいるのです。ちょっと太めの人が、ちょっと血圧が高くて、ちょっとコレステロール値(または中性脂肪値)が高くて、ちょっと血糖値が高い。太めの人にこの「ちょっと高い」が重なると、動脈硬化がすごいスピードで進んでいきます。

だから、メタポリックシンドローム診断や特定健診では肥満があるか否かを重要視しているのです。 日本人は、もともと太らなくても糖尿病になりやすい遺伝子を持っているのです。

そんな日本人が若い頃から太ってしまったら、どうなるでしょうか。当然、糖尿病や引き続き起こる動脈硬化の発病が早まってしまいます。そんな若い人の糖尿病の芽を早く発見し、早期に摘み取って発症しないように生活改善を促するのが、特定健診の目的です。 ちょっと太めでも、ちょっと数値が高めでも、病気ではないし、誰も何とも言いません。でもその蓑では確実に、動脈硬化が進行しているのです。それも、強烈なスピードで進行しているのです。

ガンより怖い糖尿病

動脈硬化の最大の危険国子は糖尿病

いま、日本人の死亡原因の第1位は悪性新生物(ガン)で、全体の30.1 % を占めています。2人に1人がガンという時代になってしまいました。2位は心疾患(15.8%)、3位は脳血管疾患(10.7 %)です。

2位と3位は動脈硬化を原因とする疾患であり、この2つを合わせると26.5 % 。ガンの30.1 % に迫る勢いです(厚生労働省平成21年「人口動態統計月報」(概数) の概況より)。ガンの恐ろしさだけが注目されていますが、動脈硬化も死につながる恐ろしい病態なのです。

この動脈硬化の最大の危険因子が、糖尿病です。その本態は「血管の炎症」です。繰り返しになりますが、ここでおさらいしましょう。そして以下の説明をあなたの頭にたたき込んでください。

血液中に過剰になった糖や、その燃えカスであるAGEという物質が、血管の内皮細胞を傷つけます。この傷によって炎症が起き、動脈硬化が進行していきます。そのスタートラインとなるのが食後の急激な高血糖、すなわちグルコーススパイクです。

グルコーススパイクが動脈硬化を促進させる - ガンより怖い糖尿病

食後、急激に血糖値が上昇すると、大量の糖が血管を刺激します。これが単球接着を引き起こし、血管への炎症をスタートさせ、血管が破壊されていくのです。糖尿病の代表的な合併症である腎症や網膜症は、微小血管が破壊されて起きる病気です。破壊力は小さいけれど、長期にわたって絶え間なく破壊され続け、慢性炎症を起こします。 大きな破壊力で大血管に急性の炎症を起こし、急速に血管を破壊するのが大血管障害です。これが、脳卒中や心筋梗塞につながっていきます。私は、血圧や動脈硬化に興味を持ち、いまも高い関心があります。 寝たきりを防ぐには、血管のマネジメントが非常に重要です。そのためにも、血糖や血圧のコントロールが必要なのです。

血圧が高いほどAGEが蓄積されて糖尿病合併症が早期化・悪化しやすい