不眠は、肥満、高血圧、糖尿病、心臓病まで招く

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不眠は脳へのダメージが大きい

不眠にも、軽度のものと重度のものがあります。眠れない日が1週間に3日以上あり、それが1ヶ月以上続くと慢性不眠と考えられます。

こうした重い不眠はもちろんのこと、たまに寝つけない日が続く軽い不眠でも、軽視してはいけません。なぜなら、不眠の本当の原因にはウツ病が隠れていたり、脳の衰えを早めて認知症(ボケ)を招いたりすることがあるからです。

睡眠には重要ないくつかの役割がありますが、特に大切なのは「脳と体を休める」「脳と体の壊れた細胞の修復・再生」という働きです。睡眠には、体を休める「レム睡眠」と、脳を休める「ノンレム睡眠」があります。この2つが交互に現れることで、脳も体も休める「質のいい睡眠」が得られるのです。

レム睡眠では、体は休んでいるものの脳の一部が働いていて、記憶の整理など情報処理をしています。レム睡眠は、浅い眠りといわれます。 一方、ノンレム睡眠は、脳が眠る代わりに、体は成長ホルモンの胱献や免疫機能を働かせて疲れを解消します。ノンレム睡眠は、深い眠りといわれます。 ふつう、人間は90~110分の周期で、レム睡眠とノンレム睡眠をひと晩に4〜5回くり返しています。

若いときは寝ついた最初の周期から深い眠りに入りますが、高齢になればなるほど深い眠りに入りにくくなったり、深い眠り自体がなくなったりします。 睡眠中は、このように脳と体を休ませると同時に、壊れた細胞の修復や再生が行われます。その役割を担っているのが、成長ホルモンです。これは子供の成長を促すホルモンですが、大人にとっても、細胞の修復や疲労回復を促す役目を持ち、若返りホルモンとも呼ばれています。

この成長ホルモンの分泌が最も盛んになるのが通常、寝ついてからの3時間です。ところが、睡眠時問が不足したり、睡眠が浅かったりすると成長ホルモンが減って、全身の細胞の修復・再生が十分に行われません。この状態が長く続けば脳が衰え、病気も招く危険性が高まるのです。 睡眠の貿が惑いと、脳にダメージを与えて、認知症を招く危険性を高めます。

命にかかわる病気の引き金になる場合も

不眠は、高血圧や糖尿病・脂質異常症・肥満などの引き金にもなります。こうした生活習慣病は、加齢や惑い生活習慣によって起こりますが、その根底には動脈硬化があります。

誰でも50蔵前後になると、動脈硬化が進み、それにつれて血圧も上がってきます。特に不眠になると、自律神経のうち、体を活動的にする交感神経の働きが高まります。その状態が続けば、体は緊張しっぱなしになり、慢性的に血圧が高くなるのです。

例えば、一晩徹夜をしただけで、翌朝の血圧の値がふだんより10 mmHgも上がることがわかっています。不眠が続けば血流が悪くなり、血管内に脂質が蓄積されて脂質異常症も招きやすくなると考えられます。

また、不眠が続くと血糖値をコントロールするインスリンの分泌量が減るため、糖尿病も招きやすくなります。 実際、糖尿病の患者さんの8割は、不眠症などの睡眠障害を抱えているといわれています。

肥満も、不眠と深くかかわっています。体内では、空腹ホルモンと満腹ホルモンが分泌され、互いにバランスを取って働いています。 不眠になれば空腹ホルモンが増え、満腹ホルモンが減ります。その結果、満腹でもつい食べすぎて太ってしまうのです。

さらに、不眠によって交感神経の働きが高まれば、心臓に大きな負担をかけます。そのため、狭心症や心筋梗塞などの命にもかかわる心臓病を招く危険性も高まります。 最近は、睡眠とガンの問係も指摘されています。以上のように、不眠は動脈硬化を進行させ、寿命を縮める病気を招く引き金にもなります。これを防ぎ、健康な老後を迎えるには、自分の体内リズムに合った睡眠をとることが何よりも大切です。

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