脳卒中は、破れる」から「詰まる」へ

もう1つ、脳卒中で大事なことがあります。同じ脳卒中といっても、ここ50~60年で脳卒中の中身が様変わりしたことです。脳卒中には、大きく3つのタイプがあります。

脳梗塞、脳出血、くも膜下出血です。脳梗塞はさらに、ドロドロのコレステロール(プラーク)によって血管が詰まってしまう「アテローム血栓性梗塞」、細い動脈に動脈硬化が起きて詰まってしまう「ラクナ梗塞」、心臓にできた血栓が流れてきて血管を塞ぐ「心原性脳塞栓症」の3つがあります。

それに対して、脳の血管が破れて出血するのが脳出血、脳の血管にできた動脈痛の破裂などによって脳を覆っているくも膜と軟膜の問に出血するのがくも股下出血です。いまから50年以上前、1960年頃は、脳卒中といえば大半は脳出血でした。脳出血を起こすと手の施しようがなく、多くの方が数週間くらいで亡くなってしまうケースが多かったのです。

ところが、いまは減塩に気を遣いよい降圧剤も開発されたので、脳出血で倒れる人は少なくなりました。しかし、脳卒中が減ったわけではありません。血管が詰まる脳梗塞が増えたので、脳卒中自体は依然として減っていません。

お年寄りが増えたせいもあって、むしろ実際は年間あたりの脳卒中の発生率は20%ほど増加しています。人間は、脳の血管が詰まっただけでは、そんなに簡単に死にません。体が不自由なので外出や買い物は自由にできなくなりますが、脳出血のようにコロッとは死ななくなったのです。

先日、54人の寝たきりになった原因調査を行いました。平成16年3月31日現在、寝たきり患者の46% が脳血管疾患(くも股下出血、脳出血、脳梗塞など)、9%が認知症です。認知症の半分は脳血管疾患が原因ともいわれているので、合わせれば約5割が脳の血管の病気が引き金になっています。

脳の血管が破れるから、詰まるへ。それが寝たきり患者を増やしました。しかも脳梗塞によって寝たきりになると、その期間が長い。脳卒中で倒れてから寝たきりで過ごす期間は、平均で4.1年。それ以外の病気の場合は、約半分の2.1年です。 日本は世界でもトップクラスの長寿国です。しかし長生きしても寝たきりならば、辛い期間が長くなるだけになってしまいます。

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